これまで海外でのクルーズについて述べてきましたが、最後にわが祖国日本のクルーズについて解説していきます。
でも日本の旅については私よりご存じの方も多いと思います。あらためて説明する必要はないかもしれませんが、船旅に限定してお話ししますね。
運航されている日本船
現在運航されている日本の客船は次の3船です。
- 飛鳥Ⅱ / 郵船クルーズ所属 50,444㌧
- にっぽん丸 / 商船三井客船所属 22,472
- ぱしふぃっくびいなす / 日本クルーズ客船所属 26,594㌧
各船の詳細については別な機会にお話ししますが、現在世界の客船がメガシップ化して10万㌧を超える客船が多い中、いずれも小型客船になっていることにお気づきと思います。
海外のクルーズ船は、一部のラグジュアリー船を除き、運賃を下げたくさんの集客を図るために大型化しています。
ただ、どうしても一人当たりのクルー/乗組員が対応する乗客の数が増えサービス面でのデメリットが出てきます。
その点、日本船は小さくても船内のサービスは、いわゆる「おもてなし」が行き届き、リピーターのお客さまが多いんですね。
客船のレーティング/格付けからも4つ星以上を獲得しています。その分料金は少し高いのですが満足度はかなり高く、最近は海外からのオファーが増えています。
それとクルーズ日数が1泊2日から設定され、日頃忙しい方でも安心して参加できます。コースと日数が多様で選択する楽しみもあります。
テーマ性のあるクルーズが選べるのも日本船の特徴です。もっと気軽に参加していただけると嬉しいですね。
クルーズシーズン
シーズンというと季節のことを指すわけですが、日本の四季に合わせた日程と寄港地が企画されています。
春から秋にかけては北海道・東北、夏は全国、冬は南の沖縄方面、一概には言えませんがこんな感じでしょうか。
一年中クルーズは楽しめますが、少なくとも海の荒れる冬の日本海は厳しいですね。この間に寄港地のない短い無寄港クルーズが設定され、船内ではコンサートや食、伝統文化などをテーマにしたイベントが楽しめます。
日本周遊の場合はもうひとつ要素が加わります。それは日本人の大好きなお祭りや花火に合わせたクルーズです。
日本全国で四季を通じて行われますので、いつでも日本人の心のふるさとを楽しむことができます。以前にも一度ご紹介した季節ごとのテーマ例をもう一度見ていただきます。
1月 | 初詣 |
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2月 | バレンタイン、雪まつり |
3月 | 小笠原ホエールウォッチング |
4月 | 桜、花 |
5月 | ゴールデンウィーク |
6月 | 利尻・礼文、五島列島など離島クルーズ |
7月 | 花火(熱海・大洗など) |
8月 | 夏祭り(竿燈・ねぶた・阿波踊り・よさこいなど)花火(熊野・関門海峡など) |
9月 | シルバーウィーク、日本一周、北海道一周 |
10月 | 紅葉 |
11月 | 歌舞伎、ジャズ、ダンス、コンサート |
12月 | クリスマス、ニューイヤー |
例えばこんな感じでしょうか。首都圏や関西圏、中部圏、九州圏を起点にしたワンナイトクルーズも定番化されていて人気です。
最近テーマクルーズは一年中設定されるようになってきましたね。お好きなテーマを選んで参加してみませんか
主な寄港地
日本は島国ですから全国各地に港がありますが、2万㌧以上の船が入港できる大きさと設備がある港は限られてきます。
それでも、船のテンダーボートを利用して小さな港や離島にも寄港できる場合もあります。
北海道 | 小樽、函館、釧路、利尻・礼文島 |
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東北 | 青森、秋田、酒田、宮古、石巻 |
関東 | 東京、横浜、館山、日立、大洗 |
北陸 | 金沢、富山、新潟、輪島、敦賀 |
中部 | 名古屋、四日市、鳥羽、清水 |
関西 | 大阪、神戸、舞鶴、新宮 |
中国 | 広島、呉、尾道、境港、隠岐島、岡山、下関、岩国 |
四国 | 徳島小松島、高松、小豆島、松山、今治、高知、宿毛 |
九州 | 博多、長崎、対馬、平戸、伊万里、八代、別府、中津、宮崎、油津、鹿児島、指宿 |
南西諸島 | 奄美大島、種子島、屋久島、那覇、石垣島、宮古島、久米島、西表島 |
こうやって並べてみると、日本は本当に島国なんだなあと実感します。名所旧跡を探訪するだけではなく、日本の歴史や伝統・文化を自分の時間に応じて気軽に楽しめるのが日本周遊の良さです。
日本船と外国船、そして寄港地と日数、費用など、パンフレットを取り寄せ検討して選んでみてください。コースは数えきれないほどたくさんあります。
外国船クルーズでの第3国の寄港地
外国船も基本は同じですが、プリンセスやコスタクルーズのように半年以上、あるいは通年でコースを設定する船会社と、キュナードやセレブリティのように春と秋の観光シーズンに合わせて日本に配船する、このどちらかに分かれます。
どちらも日数は長めになり最低でも5泊以上からですね。これはカボタージュという国際規則があって、外国船籍の船は1か国だけの海外クルーズを行うのは禁止されているからです。
必ず第3国に一度寄港しなければいけません。日本発着の場合は韓国や中国、ロシア、台湾などを必ず組み込む必要があります。
その中でも頻繁に寄港する韓国/釜山・済州島と、ロシア/ウラジオストック・コルサコフ(サハリン)を簡単に紹介します。
韓国
日本から最も近い外国として一番寄港するのは釜山ですね。博多から釜山まではフェリーで数時間で到着するぐらいですからね。
街の中心から20分ほどの釜山国際客船ターミナルに接岸しますから、観光やショッピングには便利です。
人気のチャガルチ魚市場や国際市場でグルメとショッピングを堪能する定番の観光もいいのですが、郊外に行くと山々に囲まれた梵魚寺や海沿いに建てられた海東龍宮寺をじっくり見学するのもいいですね。どことなくほっとする釜山です。
釜山から日帰り観光のできる世界遺産の古都慶州(キョンジュ)も落ち着いた歴史ある街です。朝鮮半島を統一した新羅の古都として、ぜひご覧いただきたい街です。日本流にいえば、京都・奈良といったところでしょうか。
釜山の南西、対馬海峡の近くにある済州島(チェジュ)に寄港するコースもあります。韓国のハワイと呼ばれハネムーンのメッカとして、そして韓国ドラマのロケ地としても人気ですよ。
釜山のような大都会ではありませんが、世界遺産に選定された火山島で、7㎞にもおよぶ世界最長の溶岩洞窟「万丈窟」でぜひウォーキング体験してみてください。
私も一度2㎞ほど歩いてみました。鍾乳洞のようなものとは違い、大きなトンネルになっていて途中から外にも出られますから安心して歩けます。
極東ロシア
日本海の対岸にあるウラジオストックは、ハバロフスクに次ぐ人口を持つ極東ロシアの重要港です。またシベリア鉄道の始発駅でもあり、客船ターミナルの目の前に駅があります。
客船ターミナルは街の中心まで徒歩圏にあり、散歩がてらに街の中心を散策することができます。街は一見サンクトペテルブルグかな?と思えるほどヨーロッパ風の雰囲気が漂っています。
ロシアの潜水艦が展示されている公園の近くにはグム百貨店がありショッピングも楽しめます。せっかくですからぜひロシア料理も堪能してみてください。
最後はサハリンです。どこ?と考える方も樺太と言えばお分かりですね。日本歴史にもたびたび登場しますし、日本の領土であった時代もあって日本統治時代の名残がたくさん残っています。
客船はコルサコフ(大泊)という港に寄港します。ここからバスで2時間ほど内陸に移動するとユジノサハリンスク(豊原)に到着します。
初めて訪れた時に、日本統治時代には40万人以上の日本人が南樺太に住んでいたというお話を聞いて、なるほど日本の銀行だった建物や神社跡があって当然と感心しました。
現在のサハリン州立博物館は戦前に日本の樺太庁博物館として建てられたものです。特に2階に上がると、サハリンの歴史と自然以外に当時の暮らしぶりがわかり貴重な遺産となっています。
もちろんロシアの街ですからあちこちにレーニン像があって、やっぱりロシアと考えさせられますね。
ちなみに北海道の知床半島からサハリンに向かうコースの場合、外国船でなければ絶対に体験できないことがあります。実は外国船ですと、北方4島の中を通航できるんですね。
ダイヤモンド・プリンセスの場合、国後島と択捉島の間にある国後水道を抜けて行きます。私も初めての経験でしたが左右に国後・択捉の島影を見ながら進むときには、ああ~これが北方4島なのか、感慨深い思いでした。
日本船では当然政府の許可が下りませんので、絶対に不可能です。
日本船と外国船のコース設定の基本
外国船でも同じですが、クルーズの運航は大きく分けると下記の2パターンになります。
- 定期クルーズ / エリア限定 ➔ カリブ海、アラスカ、地中海、ハワイなど
- 不定期クルーズ / エリアは限定せず広域 ➔ 世界一周など
日本船の場合は①の定期クルーズはほとんど設定されず季節に応じて毎年コースが組み替えられています。
基本的な発着地としては、横浜・東京・神戸が中心ですが、シーズンに合わせて名古屋、博多、小樽、金沢発着なども設定されますし、パターン化するのは難しいですね。
日本の四季や伝統行事に合わせて柔軟に発着地とコースが設定されています。
新型コロナの影響もあり、当面はあまり長いコースは設定せず、1週間以内の短いコースを組み合わせることになると思います。
外国船の場合はカボタージュの制限がありますから、日本船のようにワンナイトや2・3泊のショートクルーズは時間的に不可能なんですね。その代わり1週間から12日間程度のコースを設定する場合が多くなります。
外国人の乗客はどちらかというと長いクルーズに参加します。日本人は長いお休みが取りにくいこともあって4泊~7泊クルーズに集中しやすい傾向があります。
外国船のコースとしては日本一周以外にも北海道周遊や沖縄・南西諸島クルーズも人気です。ショートとロングが交互に設定され、シーズンによってはロングが続く場合もあります。
外国人乗客の中にはロングコースを連続乗船して2週間以上の長いクルーズを楽しむ方も結構多いですね。
まとめ
日本国内はみなさんいろいろな旅行をされていると思います。国内旅行は選択の幅が広くご自分の都合に合わせて旅行をすることが簡単にできます。
でも狭い日本といえども北海道一周や九州一周、あるいは南西諸島巡りといった旅はそう簡単にはできませんね。日数も予算もそれなりにかかります。それを解決できるのがクルーズです。
日本船か外国船か、この議論は永遠のテーマになりますが、少なくともあなたの日数と予算の合うクルーズが必ずあります。
何度も繰り返しますが、海から入る風景は今まで経験したことのない新しい発見があります。朝目覚めれば夢の世界、それも楽に安全にです。