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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記
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秋のアラスカクルーズ

2021.10.04
クルーズエッセイ

7月からアラスカクルーズが再開され各船会社から続々と配船が決まりアラスカの寄港地も2年ぶりに賑わいを取り戻しているようです。

アラスカの冬はスキーやオーロラツアーが楽しめるとはいえ観光業の中心は5-9月が中心です。地元寄港地等の人々も少しずつではありますが日常を取り戻せているとしたら嬉しいです。

感染症予防対策の裏で頑張る乗組員達

長い間仕事から離れていた乗組員達もやっとお客様に戻ってきていただけた船で働けるようになり古巣に帰れた気持ちと聞きました。

但しその裏ではとても厳しい感染予防対策が行われています。

その一つ、乗組員は一度船に乗ると各寄港地で船を降りることはできません。何か月間もずっと船の上です。ちょっとした買い物にも行けないそうです。

船内に乗組員専用の日用品を売るショップはありますが品揃えには限りがあります。足りないものは各自ネットショッピングで購入、港に送ってもらうそうです。各寄港地Amazonの箱が目立っているでしょうね。

9月になるとアラスカクルーズも終盤戦。早くも秋の深まりを感じます。広葉樹も色づき始め、鮭の遡上も終わりですが意外と魅力にあふれている時期でもあります。

寄港地のお土産店では一斉にセールが始まり、それを楽しみにお客様は寄港地ごとに次から次へとお店を覗き、大いにショッピングを楽しみます。

寄港地で買ってきたスゥエットをさっそく着用したら船内で同じ服を着ていた人に5人も会ったという話もお聞きしました。

通常、街で同じ服を着た人に出会ったら気恥ずかしい気持ちになったりするものですが、クルーズは違います。皆さん意気投合。

お揃いの服を着てアフタヌーンティーに出向きおしゃべりに花を咲かせたそうです。クルーズならではの楽しみ方の一つと思います。

冬眠前に栄養を蓄えるため、遡上した鮭などを目当てに熊も活動的になり、頻繁に見かけるようになるシーズンでもあり、熊を見に行くショアエクスカーションに参加するには期待が持てる時期でもあります。

秋のアラスカの楽しみ

秋のアラスカで私が一番に思い出すのはオーロラです。通常オーロラツアーは厳冬に行われ、オーロラベルトの下に位置するフェアバンクスには日本からも多くの人が訪れています。

厳冬の、尚且つ日が短く夕方になれば真っ暗になってしまう中オーロラを求め旅するのも一つですが、それよりもクルーズを楽しみながらオーロラが見られたらこんなに優雅な鑑賞方法はないと思います。

船からオーロラなんて見えるの?船からでは明るすぎて見えないでしょう。と思われるかもしれません。

通常のオーロラツアーは真っ暗闇の草原の中にポツンと建つオーロラスポットに出かけ、そこでひたすらオーロラが出るのを待つものですよね。しかし、見えるんです。私も驚きました。

初めてそれを知った時は船からオーロラが見えるなんて!今まで誰も教えてくれなった。もっと早く知っていたらと思いました。

というのもクルーズの販売に関わっていた頃は秋にオーロラが見えることは知っていましたが船から見えるという話は聞いた事が無かったのです。

その為秋のオーロラシーズンは専らクルーズ+列車でアンカレッジーデナリーフェアバンクスを廻り夜はオーロラを探しましょうという形で秋のクルーズをアピールしていました。

ガラスドーム型の専用列車に乗り、深まる紅葉を楽しみながら廻るツアーはデナリ国立公園内での野生動物観察ツアーもでき、アラスカを満喫するにはピッタリ。

アメリカでは大人気のツアー形態です。ただ日本からですとトータルの旅行日数が2週間程度とちょっと長めにはなってしまいます。

それがクルーズだけで、しかも船上からオーロラを楽しむことができたなんて、、、。

船上からオーロラ⁉

何年か前ですが、9月前半にある旅行会社のオーロラ見学とクルーズを併せたツアーに同行させて頂いたことがありました。

チャーター便でフェアバンクスに飛び、夜はオーロラ鑑賞、その後、デナリ国立公園または温泉で有名なチナなどを廻った後、ウィッティアの港から1週間のクルーズを楽しむというものです。

クルーズに乗る前の数日間、夜はオーロラ鑑賞を楽しむべく企画したものですが生憎天候は雨こそは降らないまでも厚い雲に覆われ、オーロラを見ることはできませんでした。

船に乗ってすぐ船側の方とミーティングを行った中でオーロラを見たくて内陸を廻ってきたが見えなかった事を伝えると、じゃあ望みは我々に託されたわけですね、、、と言い一枚の写真を見せてくださいました。先週撮ったものですと。

其処にはオープンデッキの向こう側にオーロラが写っているではありませんか!ここから俄然期待は高まりました。

スター・プリンセスのデッキから撮影したオーロラ

キャプテンのおもてなしでオーロラを堪能

この時乗船した船はプリンセス・クルーズのスター・プリンセス。キャプテンはイタリア人のミケーレツーヴォ。(現在は新造船スカイ・プリンセスに乗船中。)

船内至る所で見かけ、乗客やスタッフと気さくに話されていました。

聞くところによると元々はバーテンダーとして船で働き始め、船の仕事に魅了され運航士官になるべく学校に行き直し、その後スピード出世でキャプテンになられたそうです。

ある晩、11時は過ぎていたと思います。ブリッジからキャプテンの放送が入りました。

まず、深夜に放送を入れることを謝罪されましたが、続いて、今船の上にオーロラが広がっている事を是非皆さんと共有したい、普段見ることのできない自然の不思議な現象を是非この船上で楽しんでもらいたい。という趣旨のコメントでした。

それからは船内大騒ぎ、皆で一斉にデッキに上がりオーロラを鑑賞しました。

テレビなどで見る緑や赤の絨毯が降り注ぐようなオーロラではありませんでしたが天の川の様にも見えるものが急に揺らめき形を変えこちらに迫ってくるような様や、淡いグリーンのひだが空で瞬く瞬間を十分満喫できました。

驚いたことにこのキャプテン、なんとこの深夜の放送を客室にまで入れていたのでした。

数日後、キャプテンと話す機会があり、客室にまで放送を入れられたのでとても驚きましたが私たちはオーロラを見ることが今回のツアー目的の1つでもあったのでとても助かりましたとお伝えしたところ、オーロラが見える時はお客様にも知ってもらいたいという気持ちから客室に放送を入れているが今までそれが問題になったことは一度もありません。逆に今回の様に乗客の皆様からは感謝していただいていますよ。とおっしゃっていました。

スター・プリンセスのブリッジ。マージェリー氷河をバック(中央がキャプテン・ツーヴォ)

キャプテンはこの後、グレーシャーベイ国立公園を出てレインジャーも降りた後にクジラの生息地を通過した際も放送で野生動物が観察できる旨案内をされました。(この放送も客室内まで入りました!)

好天に恵まれザトウ鯨やイルカの群れなどを十分に楽しむことができました。

アラスカクルーズは春、夏、秋とそれぞれに良さを持っていて、何度でも訪れたいというお客様が意外に多い事にも納得のいくディスティネーションです。

グレーシャーベイの氷河や野生動物、先住民族の歴史や文化、ゴールドラッシュに沸いた面影を留める街を紅葉の中廻り、運が良ければ船上からオーロラも楽しめる秋のクルーズ、一度試してみる価値はあると思います。

下船日の朝、キャプテン・ツーヴォは船内を廻りお客様と握手を交わし、お別れの挨拶をしていました。こうしたキャプテンの人間性あふれる魅力もまたこの船に、クルーズに戻りたいと思う瞬間です。

執筆者 | 前村あけみ
学生時代、日本の旅行会社によりチャーター運航されたYAO HUA(耀華号)に姉にお金を借りて乗船しクルーズの楽しさを知りビックリ!世の中にはこんな楽しい世界があるという事を知る。その後、その船にスタッフとして乗船勤務した後、株式会社クルーズ・バケーションに入社。プリンセス・クルーズ、キュナード・ライン、リージェント・セブンシーズ・クルーズ、P&O クルーズ、オリエント・ライン等の多くの船会社の販売に携わる。 又プリンセス・クルーズのアラスカのシーズン中にはクルーズ・コーディネーターとして乗船。 14年勤務の後フリーランスとしてプリンセスクルーズ、キュナード・ライン、セレブリティ・クルーズ、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、ノルウェージャン・クルーズ等日本に紹介されている多くの客船にコーディネーターとして乗船。
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