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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記
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新造船に乗ってみる

2022.01.12
クルーズエッセイ

コロナ禍で新造船の建造にも影響がありました。造船所が閉鎖されたため大幅に就航が遅れたのです。そしてやっと今年2021年の秋までに約17隻がデビューしました。新しい客船にはどんな楽しみがあるでしょうか。今年乗った2隻を中心にご紹介しましょう。

探検船クリスタル・エンデバー

ラグジュアリーな客船で定評があるクリスタルクルーズが、初めて探検船を就航させました。南極や北極圏などにも行ける探検船は最近のトレンドで、多くの船社が工夫をこらし良い船を建造しています。

クリスタル・エンデバー(2万トン、乗客200人)の特徴はヘリコプター2機と潜水艇1艘を装備していることでしょう。写真のように船尾デッキにはヘリパッドがあり、その前には格納庫があります。

エンデバー号船尾のヘリパッド

私が乗船した2021年7月のアイスランド一周クルーズでは、残念ながら未だどちらも搭載されていませんでした。しかし乗客は船そのものに興味をもち楽しんだのです。

今後どちらも有料のエクスカーションとして航程により申し込みができるとか。ヘリコプターは南極の氷床やペンギンの広大な営巣地を上空から眺めたり、航海中の本船を写真に収めることもできます。潜水艇は南太平洋などで、美しいサンゴや色とりどりの魚を観察することができるでしょう。

エンデバー号にはマッドルームという探検船らしい設備がありました。上陸時に履く長靴やゾーディアック(エンジン付き強化ゴムボート)乗船時に必要な救命胴衣を入れて置く、小さな鍵付きロッカーが一人一個ずつあるのです。テンダーボート乗り場近くにあるので上陸のたびに運ぶ必要はありません。また乗客の2倍を許容する救命艇も装備しています。

とはいえ、探検船とは思えないほどラグジュアリーな小型船でもあるのです。本格的な和食が食べられる最初の探検船といえるでしょう。

ウミウマは世界的な評価を得ているシェフNOBUこと松久信幸氏がプロデュースする創作和食のレストランです。お刺身やカリカリに揚がった海老天、和牛フィレ6オンス(約170g)、温かいお蕎麦などが誰でも1回は無料で楽しめます。予約不要のカウンター8席とテーブル30席がありました。

エンデバー号和食レストラン「ウミウマ

それからカジノがあるのも特筆に値します。探検クルーズに必要?と思われるかもしれませんね。しかし船社はカジノで有名なゲンティングループで、毎晩かなりの席がうまっていました。香港の船社なのでアジア人乗客を意識してか、ブッフェにはカップヌードルも何気なく置かれていています。

船社も新しいスカーレット・レディ

新しくクルーズ業界に参入した船社としてヴァージン・ボヤッジズがあります。昨年2月イギリスのドーバー港に第一船のスカーレットレディ(11万トン、乗客2860人)が入港し、メディア向けにお披露目がありました。一泊二日の下見です。

スカーレット船上のブランソン会長

リチャード・ブランソン会長も駆けつけ、こんなコメントを。「ヴァージン・ボヤージの客船はクルーズ嫌いの人向けなのです。」冒険が好きで、何か新しいことに挑戦し続ける同氏らしい発言でした。確かに、本船には斬新なアイディアがいっぱいです。以下、列挙してみましょう。

  • 乗客は18歳以上の大人オンリー
  • 乗客ではなく「セーラー」とよぶ
  • 洋上初の入れ墨TATOOショップあり
  • ブッフェなしで20種類以上のレストラン
  • 全キャビンに赤いハンモック

 

今年10月6日からマイアミ発着クルーズを開始していますが、乗客は40~70歳が多数とのこと。ブランソン会長のようにビートルズエイジが多いようですね。いま世界中で話題になっているフードロス問題を先取りするようにブッフェをなくし、全て注文式。

韓国の焼肉やヌードル・ショップでは豚骨ラーメン、「エクストラ・ヴァージン」という名の極上イタリアン店、ケバブやタコス、植物由来のビーガン対応カフェなど、かなり多彩です。食事代は基本的に料金に含まれ、高価なロブスターなどは追加料金がメニューに記されていました。

ヴァージンといえば、やはり音楽やエンタメが注目されるでしょう。夜のショータイムも一味違いました。シアター式の劇場というよりも、すぐ目の前で見られるダンスや視覚だけで楽しめるアクロバット的なショーです。

また、大人のみということでSexologistの「ショー」が話題になっています。全客室にはブラックボックスが隠されているそう!ショーを見たある男性は「ワイフにはその箱を隠さなくちゃ。」と笑って話したそうです。

小型船から帆船までバラエティに富む種類

上記2隻は、斬新なコンセプトや施設で乗客を存分に楽しませてくれるでしょう。しかし新造船は苦手で好まない方もけっこういらっしゃいます。設備が整っていなかったり、クルーも慣れていないから少し待ってから乗船しよう、というわけです。

確かに仰る通り。不慣れな部分もあるでしょう。一度でも新しい客船に乗ると、その違いがわかります。何度か洗った柔らかいシーツの気持ちよさ、経験豊富なウエイターが説明してくれるメニュー、にっこり笑顔で質問に即答してくれるレセプション係など。乗客の皆様によって磨かれていくサービスが多いのです。

今年は小型船がシルバームーンなど約3隻、中型船はヴァイキング・ビーナスなど2隻、大型船はMSCヴィルトゥオーサなど9隻、探険船2隻、帆船1隻が既に就航し、年内さらに数隻が出る予定です。まだ新しいうちに乗ってみる。かつて経験したことがない発見や楽しみがきっとあることでしょう。

執筆者 | 吉田あやこ
クイーン・エリザベス2と初代飛鳥元クルー、現職はクルーズアンバサダー。
クルーズバケーション社のコーディネーターを経て現職。英国在住30年。
クルーズガイド取材アシスタントなどを含め、世界の客船約100隻に35年の乗船経験あり。
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