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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記

ドナウ川クルーズ

2021.12.15
クルーズエッセイ

欧州でクルーズが再開し、脚光を浴びているのはリバークルーズです。乗客数が少ないこと、屋外のスペースが多いことが、安心感を与えてくれるからでしょう。海のクルーズとは違う魅力があり、一度体験するとやみつきになる方も。今回は欧州で王道といえるドナウ川クルーズをご紹介しましょう。

リバーVSオーシャン・クルーズ

まずは海のクルーズとの違いを列挙してみます。

1 揺れない 

基本的に川ですから、大きく揺れる事はありません。
たまに揺れを感じるのは他の船とすれ違った時などです。春から秋にかけて気候の良い時期にクルーズするので雨天や嵐などで船酔いすることは極めて稀といえるでしょう。

2 両岸が見えて安心

クルーズが苦手な方は「陸上から離れ、水上にいる」という感覚で不安になる、とよくおっしゃいます。でもリバー船はたいてい両側にワイン畑や街並みが見えていますから、ほっとしますね。

3 乗客数が少ない

多くても2百人ぐらいで千人も超える大型リバー船はありません。なぜなら流域のあちこちに幅の狭いロック(閘門)があるからです。各船はそのロックのサイズに合わせて造船されているため、大きさに限界があります。

4 食事時のドリンク込み

いわゆるインクルーシブ制に近いシステム。多くの船社はランチやディナー時に頼むワインやビールなどを無料にしています。中には全ドリンクが料金に含まれる船社も最近は増えてきました。

5 乗下船がラクラク

「着岸しました」というアナウンス後、5~10分で上陸できるなんて嬉しくなりませんか。入国検査はありませんし、テンダーボート乗船もありません。
着岸場所は市内に近い場所がほとんど。徒歩観光が
できますし必要あればシャトルバスが用意されます。

ドナウ川は一番人気

世界の大都市はかつて川沿いに栄えた、といわれています。ロンドンはテムズ川、パリはセーヌ川、ウイーンはドナウ川等が好例でしょう。かつて河川は人や物資を運ぶ重要な動脈でした。よって大きな船着き場には人が集まったり宿泊したりビジネスで栄えたのです。今ではすっかり観光地化していますが、歴史があるため世界遺産として登録されている都市が多いですね。

リバークルーズというのはかつての大きな都市などを船上から眺めるのにぴったりだと思います。写真は世界遺産都市ブダペストのセーチェーニ鎖橋をこれからくぐろうとしているところ。夜景も素晴らしいですが、昼間に国会議事堂やとんがり帽子のような尖塔の漁夫の砦を見るとまた違う趣です。

陸上のツアーや数時間のミニクルーズではとても河川全体の魅力を満喫できません。約一週間かけてゆっくりクルーズしてみると、様々な景色や経験、知識が得られるのです。

ヨハン・シュトラウス二世の「美しき青きドナウ」で有名なドナウ川はおそらく最も人気があるリバークルーズでしょう。発着はウイーン(オーストリア)またはブダペスト(ハンガリー)がほとんどです。なぜなら前泊や後泊をすれば観光が楽しめるから。

ウイーン ミヒャエル広場

市内観光はもちろんのこと、ウイーンならば元祖ザッハートルテを食べに行ったりオペラやコンサートを楽しめます。ブダペストならば中央市場の訪問や天然温泉で泳ぐことも。どの船社も滞在プランや近場のお薦めツアーを出しているので要チェック。

ブダペストからは「ドナウの大曲」(おおまがり)を丘の上から見学できるツアーがあります。U字型に大きく曲がったドナウ川は、しばしばカレンダーに使われるほど絶景ですが、クルーズしていますと見えません。これをバスに乗って見に行くのです。

ドイツ南西部の「黒い森」から黒海へ注ぐ全長約2860kmのドナウ川。クルーズでは船社により以下のような各都市に寄港します。一週間で4か国もの国をラクに訪ねることが可能ですからクルーズは便利ですね。

  • パッサウ(ドイツ)
  • リンツ(オーストリア)
  • クレムス(オーストリア)
  • メルク(オーストリア)
  • デュルンスタイン(オーストリア)
  • ウイーン(オーストリア)
  • ブラチスラバ(スロバキア)
  • エステルゴム(ハンガリー)
  • ブダペスト(ハンガリー) 

進化を続けるリバー船

かつてのリバークルーズには制限がありました。海のクルーズではあたりまえにあるものが無かったのです。エレベーターやバルコニー付きの客室、バトラー、プール、ジム、サブレストランなど。しかし現在は多くのリバー船が進化し乗客本位の施設やサービスを提供するようになりました。

小さなバルコニーが付いた部屋

車椅子対応のエレベーターはその一例です。さらにバルコニーがあると換気ができますし、景色だけでなくクルーズする「音」も楽しめます。温水プールはなかなかの人気で、そばにスパのマッサージ室を備えた船もできました。

最近はメインダイニングの他に無料で利用できるグルメレストランが流行っています。カジュアルな特製バーガーやピザから本格的なフレンチまで種類はいろいろです。海のクルーズと競うかのように、選択肢を増やし豪華になっていく傾向が全体にあるといえます。

食事

階段を昇って屋外のデッキに出ますと360度のパノラマで、ドナウ川の雄大な景色が楽しめます。日焼けが気になる方はテントの下で日光浴をしたい方はデッキチェアでゆったりと。船内のWiFiも料金に含まれている船が多いですから、陸上と最低限の連絡を取りながら、クルーズを楽しみましょう。 

執筆者 | 吉田あやこ
クイーン・エリザベス2と初代飛鳥元クルー、現職はクルーズアンバサダー。
クルーズバケーション社のコーディネーターを経て現職。英国在住30年。
クルーズガイド取材アシスタントなどを含め、世界の客船約100隻に35年の乗船経験あり。
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