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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記
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シニアに優しいサービス

2022.02.09
クルーズエッセイ

世界には3百隻以上もの客船があるといわれています。どの船でクルーズしようか、と選択に悩むほどですね。昨今は年齢制限付き客船も増えました。

いわゆる賑やかなファミリーは乗らず「大人向き」というコンセプトで運航されています。代表的な船社や、シニア向けのサービスをご紹介しましょう。

50歳以上向け英国の老舗船社サガ・クルーズ

2021年初夏、コロナ禍を経てクルーズの再開が英国で発表されました。この時ワクチン2回接種を乗船の義務とする、と発表した会社があります。それがサガ・クルーズでした。

このニュースが報道されると業界はもちろんのこと、クルーズファンも驚いたものです。当社は、現在そっくり双子の客船スピリット・オブ・アドベンチャー(5万8250トン、乗客定員999人)とスピリット・オブ・ディスカバリー(同上)を運航しています。

乗客を50歳以上とし、大人のエレガンスを追及するクルーズラインとして英国では多くのファンを獲得しているサガ・クルーズ。高齢者を守るためにワクチン義務も決定されたのでしょう。「これなら安心できる」という声も聞かれました。ワクチンはどの国でも年齢順に行われたようですから、シニア世代は早めに受けられるという利点もあったのです。

さて当社のサービスを列挙してみましょう。

1送迎サービス(片道約400キロまで)

多くの乗客に好まれているものにショーファー・サービスがあります。英国在住ならば自宅から乗船港、下船時は自宅まで専用車による送迎が含まれるのです。

日本からならヒースロー空港にドライバーが迎えに来てくれドーバー港などへ送ってくれます。ご夫婦のみ等、他の乗客は同乗せず個人送迎なのでコロナ禍では特に評判です。

2ドリンク、チップ、WiFi、旅行保険などが無料

いわゆるインクルーシブという、クルーズに必要なものは料金に含まれるというシステム。寄港地のツアーも厳選されたものは無料なので追加料金なしで参加可能です。

料金が発生するものはキャビン番号やサインが必要になりますが、ほとんどが料金内ですむため低接触のサービスになります。

3シングルキャビンが約2割

両船には540室のキャビンがありますが109室もシングルキャビンがあります。女性のシニアおひとり様が多いのが特徴です。

二人部屋ですと追加料金になるものですが、シングル室なら不要。世界一周クルーズも行う当社ではこのニーズを考慮して造船されています。

4よく訓練されたクルー

創始者はキュナードライン出身であることから、歴代の船長やオフィサーもクイーンエリザベス2号などに乗船歴があります。特筆すべきはサービスが親切で、シニアに優しいこと。

乗船時はキャビンのグレードにかかわらず、全乗客をキャビンまで案内します。コロナ禍で変更しているかもしれませんが。フロント係やレストランのウエイターは、忍耐強く乗客の話を聞いてくれます。シニアに特化した船社らしいサービスといえるでしょう。

設備が充実しているハパグロイド・クルーズ

サービスの老眼鏡

木の箱に入った眼鏡を見せているのはドイツ客船オイローパ(2万8890トン、乗客定員408人)のレストラン支配人です。うっかり眼鏡を忘れた時、キャビンに戻る必要はありません。またメニューの文字が小さくて読みづらい時、お願いするとこの箱が出てきます。強度が数種類あって選べる老眼鏡は便利ですね。

ラグジュアリーな客船を所有するハパグロイド・クルーズでは目立たないところで乗客優位の設備を完備しています。シニアだけではなく他の乗客にも役立つでしょう。

1スロープによる救命艇へのアクセス

スロープ

車椅子で救命艇へ行けるスロープをもつ客船はそう多くはありません。当社の2隻とクリスタルクルーズの2隻(シンフォニー&セレニティ)及び飛鳥Ⅱ(旧クリスタルハーモニー)ぐらいです。スロープがない客船は、緊急時に通常5人のクルーが移動介助に配置されています。

2車椅子用キャビン、バルコニーのアクセス

車椅子客室

写真のように、バスルームも十分なスペースが確保され、バルコニーにはスロープも用意されています。

さまざまな楽ちんサービス

1ループシステム(音声サービス)

白い杖や車椅子を見たら、誰でも気がつきますね。しかし会話や音が聞こえない、という問題は目に見えません。補聴器というものは周りの雑音をひろってしまうため、敬遠する方がけっこういらっしゃいます。よって大きな声で話す方も。  

前述のサガ・クルーズやキュナードラインなどはフロントデスクあたりに対策を施しています。ループシステムとは磁気コイル付の補聴器や人口内耳に電気信号を送り、聴きたい音だけを正確に聴く方法。床にヒアリングループ(磁器ループ)が設置され、フロント机上に「LOOPS」や青い耳マークの看板が出ているので分かります。

2ソフトフードの依頼

堅い物が食べづらい時はありませんか。歯の治療中や嚥下しにくい時はスープやマッシュポテトなど柔らかい料理が体に合っていますね。どの客船でも、ソフトフードとして注文することが可能です。

野菜のみのベジタリアンや流行のグルテンフリー食と同じ感覚です。野菜ピューレなどから豆腐、細引きの挽肉で作ったハンバーグや滑らかなパテやテリーヌなど、シェフの腕の見せ所でしょう。元気な方も一緒に頼めばメニューを学べますね。

3電話応対サービス

最後は、私の希望しているサービスです。分からない事がある時キャビンから電話すると、よく録音メッセージが流れてきます。そして人が出てくれるまで延々と待たされるもの。

大型客船では困難かもしれませんが、中型や小型船なら人がすぐ出てくれる直通ラインがあってもよいのでは?と思います。皆が「シニア世代」になるご時世ですから、シニア優先というわけにはいかないでしょうが。

執筆者 | 吉田あやこ
クイーン・エリザベス2と初代飛鳥元クルー、現職はクルーズアンバサダー。
クルーズバケーション社のコーディネーターを経て現職。英国在住30年。
クルーズガイド取材アシスタントなどを含め、世界の客船約100隻に35年の乗船経験あり。
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