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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記
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インクルーシブの魅力と秘密

2022.03.09
クルーズエッセイ

昨今はカタカナ言葉に毎日出あうようになりました。セレクションとかランキングなど簡単なものならよいのですが、はてな?と思う難解な言葉も、たまにありませんか。

しばしばクルーズで耳にする「オール・インクルーシブ」はいかがでしょうか。単に「インクルーシブ」とよばれることもありますね。今回はコロナ禍の状況もふまえて、その魅力にせまりましょう。

クルーズは本来お得な旅のかたちです

新幹線とホテル代が含まれ激安のパックになっています、などという旅行社のパンフレットをたまに見かけます。移動と宿泊の代金を一緒に払えば割引になる、と納得してしまいますよね。でもクルーズは更に多くのものが料金に含まれているのです。

移動代(船賃)、宿泊代(キャビン滞在費)、食事代(一日5食?)、アクティビティやショーなどのエンターテイメント代(ミュージカルやコンサート)、サウナやプールなどの施設利用費など。

パンフレットに書かれていますが、実際に体験してみないことにはその価値はなかなかわかりません。最も大きな特長は体がラクなことでしょう。一週間の旅でも、同じキャビンに滞在し寄港地をあちこち訪れますから、下船するまで荷造り不要です。洋上のホテルとも言われていますね。

クルーズ料金には「必要なものが含まれている」のが基本です。それが約20年ほど前から「インクルーシブ」または「オールインクルーシブ」という言葉が登場しました。いったいどのように利用でき、どんな船社が当サービスを提供しているでしょうか。

インクルーシブに含まれるもの

通常の「オールインクルーシブ」には以下が含まれています。

  • ドリンク(コーヒーなどのソフトドリンクやお酒を含む)
  • 高速WiFi
  • 基本のチップ
  • 寄港地エクスカーション最低ひとつなどに参加
  • 24時間ルームサービス
  • シャンペンや豪華なカナッペが出るパーティ
  • メインダイニング外のグルメレストラン利用

 

なかにはリージェント・セブンシーズクルーズのように、乗船地のホテル前泊や港までの送迎を含む船社もあります。いわゆるラグジュアリークラスの客船がこの料金制度を採用しています。

ベニスを出港するシーボンオデッセ(インクルーシブの先駆け) <br>撮影:ダグラス・ワード

その代表的な船社は以下の通りです。

  • アザマラ(セレブリティクルーズの「デラックス・ブランド」)
  • クリスタルクルーズ(外洋船2隻、探検船1隻)
  • ポールゴーギャン・クルーズ(通年タヒチ運航)
  • シーボーン・クルーズ(オールインクルーシブの業界先駆け)
  • シルバーシークルーズ(一流ブランドと提携)
  • シードリームヨットクラブ(ヨット型の高級船)
  • リージェント・セブンシークルーズ(豪華なインテリアやサブレストランも人気)

 

オールインクルーシブ制のクルーズはどんな感じでしょうか。シー・ドリームⅠ(約4千トン、乗客定員112人、シードリーム・ヨットクラブ)を例に挙げてみましょう。

ヨットという呼び名通り小型でクルーが95人も乗船しているのでプライベート感があります。朝食とランチは屋外のブッフェで好きなものを。朝からシャンペンを頼む「朝シャン」やミニッツステーキを楽しむ人もけっこう多いですよ。

地中海やカリブ海などでは投錨して、船尾にあるマリーナを使い、ジェットスキーなどに挑戦も可能。シュノーケリングやバナナボートなど水上スポーツが本船の人気アクティビティです。

シードリームⅠのビーチパーティ(シャンペン&キャビア) <br>撮影:ダグラス・ワード

自分のヨットで過ごすように、のんびりとデッキで過ごす中高年カップルが多く、日本人には寄港地で仕入れた鮮魚でお造りや巻き寿司、車エビの天ぷらを出してくれることもあります。もちろん純米酒も一緒に。「辛口の白ワインを一杯」といえば上等なワインが日替わりで出るため、選ぶ手間は不要。お任せで楽しめるのです。

ディナーの多彩なメニューは、特筆に値します。ロブスターなども追加チャージはありませんし、今はやりの植物由来メニューも日替わりでフルコース。

業界初の試みで、低温調理の野菜カレーや豆腐、彩り野菜のサラダなどは「食べ過ぎ」の日に最適です。メニューで値段を見ることがほとんどないインクルーシブ制は確かに割高になりますが高級感を十分楽しむことができます。

含まれないもの&購入可の「インクルーシブ」

全て料金に含まれるとはいえ、説明の下に*印があり「以下は別料金となります」と記載されているのをしばしば見かけます。それは以下のような個人消費のものです。

  • スパや美容室の料金とそのチップ
  • 寄港地ツアーの一部
  • 船内ブティックやフォトショップ利用代金
  • ドライクリーニング代
  • カジノ代
  • 高級食材の追加チャージ
  • ヴィンテージなどの高級酒

 

確かに、大半の方にとって上記はクルーズに必須なものではありません。よって船社も誇大広告しているわけではないのです。正確にいえば「オールモスト・インクルーシブ」(ほとんどインクル)といいことですね。

コロナ禍でこのシステムは注目を集めています。なぜなら、低接触サービスになるので。ドリンクがクルーズ料金に含まれるため伝票やサインも不要。

ダイヤモンド・プリンセス(アトリウムロビーでのパフォーマンス)<br> 撮影:ダグラス・ワード

最近はドリンクパッケージというお得なプランを作る船社が増えました。追加料金で「インクルーシブ」体験ができるわけです。2022年プリンセスクルーズが案内している「プリンセス・プラス」はその一例になります。

*プレミア・ビバレッジ・パッケージ
お酒は一日15杯まで。($12以下)
ソフトドリンクは無制限。サービスチャージ込み。
*無制限の高速WIFI接続
*チップ

インクルーシブのクルーズといえば、記念日など特別な機会の時に、と考える人が多いと思います。でもコロナ禍で状況が変わりました。旅行すること自体が減ったので、行けるなら「今」がその機会ではありませんか。

運が良いことに、各種割引や船内クレジット(お小遣い)などが多く紹介されている時期です。「インクルーシブのデビュー記念日」を作っても面白いですね。

執筆者 | 吉田あやこ
クイーン・エリザベス2と初代飛鳥元クルー、現職はクルーズアンバサダー。
クルーズバケーション社のコーディネーターを経て現職。英国在住30年。
クルーズガイド取材アシスタントなどを含め、世界の客船約100隻に35年の乗船経験あり。
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