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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記
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晴海客船ターミナル

2022.05.25
クルーズエッセイ

オープン当時のターミナルはおしゃれなスポット

日本有数の繁華街、銀座からはタクシーであれば10分程度、路線バスも頻繁に運行されており、大都市の客船ターミナルとして交通の便がとても良い晴海港。そこに晴海客船ターミナル ができたの 1991年 ( 平成 3年) 5月のこと。東京港開港50周年を記念し、東京の海の玄関として開業しました。

ピラミッドのような屋根が特徴的な建物は、ファッションビルSHIBUYA 109など多くの商業施設を手がけた建築家の故・竹山実氏の代表作だそうです。上階には東京湾が見渡せるガラス張りのおしゃれなレストランも併設されていて、バブル終焉の頃とは言え、車で晴海までドライブし、このレストランで食事をするのは結構おしゃれと言われていたらしい。

よくテレビ撮影などのスポットとして利用されていました。レストランの名前は確かメイキッスという名前で利用客層を意識したネーミングだったと思います。

ターミナルは海外からのクルーズ船入出港にも対応し、出入国管理設備も備えていました。今後、想定されるクルーズの国際化を見据えた施設設計であったと聞いています。にっぽん丸、古くはふじ丸、飛鳥Ⅱ、パシフィックービーナスなどの日本船の発着港として、またラグジュアリークラスのクリスタルクルーズ、シルバークルーズクルーズ、アザマラクルーズ、リージェントクルーズなど中小型船たちも寄港していました。

立ちはだかったレインボーブリッジ

レインボーブリッジ
レインボーブリッジ

晴海客船ターミナルのオープン2年後、19938月に東京湾に芝浦とお台場を結ぶレインボーブリッジが開通。晴海客船ターミナルにとってこの橋は虹色には見えなかった。

というのもこの橋は設計当時、クルーズ船といえばだれもが思い浮かぶクィーン・エリザベス2が通過できる高さということで52メートルとしましたが、実際船の高さは52メートル。余りにもギリギリではないですか。東京湾内とはいえちょっとでも波が出たら当然橋の下はくぐれないギリギリの高さです。事実クィーン・エリザベス2がレインボーブリッジをくぐり晴海に姿を現すことは一度もありませんでした。

その頃から世界のクルーズ船は大型化ブームでどんどん巨大化、7万トン、9万トン、10万トン水面からの高さも60メートルを超える大きな船が就航しだしていました。そして、そういった大型船は、貨物用埠頭である品川埠頭や大井埠頭を使用するような状況も出てきていました。

そういった理由もあり、晴海は小型のラグジュアリー船に良く利用されていました。日本を代表する、外国人でも知っている銀座へのアクセスが良かったことも大きな魅力の一つと思います。

海外のクルーズ船で横浜に入港した際、多くの外国のお客様に様々な質問を受けました。私の仕事は日本人のお客様に対するサービスが基本ですが、ワールドクルーズの途中などに日本に寄港する場合は外人が毎日列をなして質問に並ぶようになる事もありました。

銀座に行きたい、銀座で日本のステーキが食べたいという質問がなんと多い事か。横浜港に入っていてもこの質問が多く、横浜でも美味しいステーキは食べられますよ、とお伝えしても銀座にこだわる方が意外と多かった事が今でも記憶に残っています。

銀座以外にも近くには築地市場がありました。エクゼクティブ・シェフが興味津々に朝の市場に出かける姿を見かけました。戻ってきてバジルが一束2500円もした!と驚愕していました。家庭用の束とは違い大容量での購入なので仕方ないのではと思いましたが海外に比べると比較にならない高値だったようです。船によっては「シェフと行く早朝の築地ツアー」なども企画されていて外人客だけでなく日本人にも人気となっていました。

横浜大さん橋国際クルーズターミナル

横浜大さん橋国際クルーズターミナル
横浜大さん橋国際クルーズターミナル

2002年横浜大さん橋国際クルーズターミナルが出来上がると飛鳥は横浜を母港とし、当初は晴海にとどまっていたにっぽん丸なども横浜発着のコース設定が増えてきました。大さん橋ターミナルにも入港・接岸前には横浜ベイブリッジを通過しなければならない橋問題は存在していましたが、ベイブリッジの海面からの高さは56メートル。レインボーブリッジと比べると4メートル高くなります。10万トンクラスの船でも通過できる高さでした。

しかし、クルーズ船の大型化は更に進み、船のサイズも20万トンを超えるものが出てきている中、横浜では大型クルーズ船に対応できる大黒埠頭ターミナルを2019年にオープンさせました。

東京国際クルーズターミナル

東京港でも20209月、お台場に東京国際クルーズターミナルをオープン。東京にも世界最大級の客船が入港できると銘打ったクルーズターミナルが出来上がりました。このターミナルが出来上がった事で晴海客船ターミナルは30年に渡る役目を終えることとなりました。

残念ながら新ターミナルも今は閉館中ですが年内には再びクルーズ船が行き交う景色を眺められるようになるのではないでしょうか。 

悲運の晴海客船ターミナル

悲運の晴海客船ターミナルと思うのは私だけでしょうか。

完成以来、レインボーブリッジにその道を阻まれ、横浜大さん橋クルーズターミナルにその地位を奪われ、クルーズ船の巨大化は更に進み大型船を受け入れる為新しいクルーズターミナルが横浜、東京にどんどんと建設されました。その陰でひっそりと小型、中型船を受け入れながら約30年間活躍してきたのに、、、残念ながら今年の220日をもって閉館となり今後は解体を予定しているそうです。

ターミナルのすぐ裏には東京オリンピックで使われた選手村があり巨大マンション群となって多くの住人が晴海港を眺めて過ごし、目の前に日本や世界各国のクルーズ船の入出港風景を見ることができたら素敵だろうなと一人想像していましたが残念でなりません。

閉館日の前日晴海に行ってきました。閉館中で至る所に柵が設けられていて思う様には見ることができませんでしたが曇り空を背景に建つ晴海客船ターミナルの写真を撮りました。

執筆者 | 前村あけみ
学生時代、日本の旅行会社によりチャーター運航されたYAO HUA(耀華号)に姉にお金を借りて乗船しクルーズの楽しさを知りビックリ!世の中にはこんな楽しい世界があるという事を知る。その後、その船にスタッフとして乗船勤務した後、株式会社クルーズ・バケーションに入社。プリンセス・クルーズ、キュナード・ライン、リージェント・セブンシーズ・クルーズ、P&O クルーズ、オリエント・ライン等の多くの船会社の販売に携わる。 又プリンセス・クルーズのアラスカのシーズン中にはクルーズ・コーディネーターとして乗船。 14年勤務の後フリーランスとしてプリンセスクルーズ、キュナード・ライン、セレブリティ・クルーズ、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、ノルウェージャン・クルーズ等日本に紹介されている多くの客船にコーディネーターとして乗船。
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