世界一周クルーズが再び話題になり予約も好調だそうです。洋上ホテルといわれる客船で数か月にもなる長旅。たとえ乗船しなくても気になりますね。
最近よく質問を受けます。「実際はどうなの?」ガイド本やネットには情報がたくさん出ていますが求められるのは「活きた声」でしょう。ありがたいことに私は英国船6隻で計8回、世界一周をさせて頂きました。区間乗船を入れると10回を超えます。クルー又はコーディネーターという仕事だったので日本人のお客様から多くのご質問を受けてきました。
この体験をこれから6回でシェアしていきたいと思います。第二回目のテーマは「時差変更」です。
目次
訪問国に合わせて時間を調整
海外旅行をする時は訪問国の時間に合わせます。写真のアロハタワーがあるホノルル(ハワイ)なら日本時間を19時間遅らせることになるわけです。飛行機ならば到着前にさっと時計を調整しますが、船旅では一度に変更することができません。飛行機で一時間の距離でも、船では一日かかりますから。
生活に支障がないよう、ゆっくり調整するのです。時差変更に関する情報は船内新聞に掲載されます。「7月15日の深夜2時、船内の時間が一時間遅れます。お休み前に時計を一時間遅らせてください。
例:夜11時は、夜10時に。」という具合です。
時差変更がある夜は、客室に戻るとベッドの上にカードが置かれていることでしょう。「今夜は船内時間が一時間遅れます」1~2週間のクルーズでは、時差変更は多くて2、3回ですが約100日にもなる世界一周クルーズとなれば、その回数も増えます。
いつ、どこで、どのように?
長いクルーズでは、どんなタイミングで時差変更をするのでしょうか。写真は常に持参している地図ですが、スイカを地球に見たててご説明しましょう。縦の縞々が経線、すなわち北極と南極を結ぶ線です。
経線の15度がポイント
世界は一日24時間で区分されていますから、360度÷24時間=15度という計算になります。よってスイカの縦縞を各1時間とみて合計24本。
東に15度進んだら、一時間前進させる
西に15度進んだら、一時間後進させる
よって西回りの世界一周フル乗船なら合計24回、時計を一時間遅らせるという理論になります。航路により少し東に戻り再び西へ進む場合等もあるため、正確にいえば、時差変更は合計24回前後です。
各客船、航路によって変更日時を決定
次の寄港地までに2回変更が必要な場合、船内のイベントなどを考慮し、各船は変更のタイミングを決めています。2日連続の時もあれば、出港翌日と入港前日という場合もあるのです。
フル乗船なら合計のクルーズ時間は同じ
「遅らせる=一日25時間=得をする」ように思えますが残念ながらそうはいきません。合計24時間遅らせますと、引き算し過ぎになるため日付変更線の通過時に日付を一日飛ばすのです。すなわち7月15日の翌日は7月17日になり、得したはずの24時間を失って、ご破算になります。7月16日がお誕生日ならば、歳をとらずにすみますね!?
西周り VS 東回り
船内の時計は自動変更
写真はエリザベス号のシンボル的な大時計です。正午等にキンコン・カンコーンと鳴りますし、時差変更も自動的に行われます。昨今は客室時計や電話もコンピューター制御で常に正しい船内時計を表示してくれるので便利ですね。マニュアルで変更するのは腕時計や持参のアラーム時計ぐらいです。
西回りはたくさん寝られる?
ほとんどの客船は西回りです。「体にやさしい」と言われるのは、時差変更で一時間または30分を遅らせるため。夜12時に客室に戻れば、まだ11時というわけですから、確かに一時間多く寝られて誰でも嬉しいでしょう。
一日23時間という経験
では反対の東周りコースはどうでしょう。12時を午前1時に変更し「一日23時間」をフル乗船で24回前後繰り返すことになります。辛そうだな、と思われるかもしれません。
しかし実際に乗ってみますと、体が慣れてしまうのです。他のお客様からも同様の声を聞きました。睡眠が一時間減っても受験生ではありませんし翌日「出勤」する人はいませんから問題なし。時差変更がない日は「今日は24時間でラッキーね!」と、皆で喜んだくらいです。
2023年の東回り客船
東回り世界一周クルーズをする客船はいつも数隻あります。クイーン・メリー2(約15万トン)も来年は18か国訪問、102泊の東回りコースです。
姉妹船クイーン・ビクトリア(約9万トン)は西回りで、2隻は100周年記念クルーズとして、英国の母港サザンプトンを1月11日に同時出航します。船社キュナードのラコニア号が世界初の世界一周をして100年のお祝いです。世界をめぐる旅は長い歴史があったのですね。