世界一周クルーズが再び話題になり予約も好調だそうです。洋上ホテルといわれる客船で数か月にもなる長旅。たとえ乗船しなくても気になりますね。
最近よく質問を受けます。「実際はどうなの?」ガイド本やネットには情報がたくさん出ていますが求められるのは「活きた声」でしょう。ありがたいことに私は英国船6隻で計8回、世界一周をさせて頂きました。区間乗船を入れると10回を超えます。クルー又はコーディネーターという仕事だったので日本人のお客様から多くのご質問を受けてきました。
この体験をこれから6回でシェアしていきたいと思います。最終回のテーマは「健康をキープ」です。
健康はクルーズだけではなく人生を楽しむ大切な要素です。船医が乗船しているとはいえ、長い航海では自分管理が大切。世界一周クルーズの体験と、かつて病院薬剤師をしていた頃の知識を総動員して健康を保ち、快適に過ごす方法を考えてみました。
目次
乗船前の準備
写真は英国南部にあるサザンプトン港のクルーズターミナルです。「Departure(出発)」の文字で旅に出る気分がアップしますね。ここに到着するまでに準備が結構あるものです。リストを作成して備えましょう。
保険
昨今は旅行傷害保険がとても重要になりました。船社により新型コロナウイルスとクルーズの両方が求められることも。クレジットカード付帯の保険は3か月にもなる長期では対応不可の場合もあります。クルーズ海域も確認して適切な保険を選びましょう。
体のメンテナンスを事前に
歯科医は乗船していませんから歯の手入れは必須。
固い物が噛めなくなり「刻み食」になる方もいます。メガネ等も予備があれば安心です。血圧や心臓などの処方薬は、成分名を英語で記した「海外仕様」の処方箋も準備しましょう。
直前はケガや病気に注意
出発前のケガも要注意です。転倒して足首を捻挫したり調理中に指を切り乗船に苦労した方もいます。昨今は新型コロナ感染も注意しなければなりません。出発前は不要不急の外出を控える方が増えています。
太らない工夫
写真はビーフカルパッチョです。青菜ルッコラを増量してもらいました。クルーズでは太ってしまうのが悩みとよく聞きます。しかし船上でダイエットなんて残念です。非日常の体験なので好物や珍しいメニューは食べたいもの。乗船時の体重を(できるだけ)保つ方法はないでしょうか。
ゆっくり食べる
最近の日本では「野菜ファースト」などと言って食べる順番を守って肥満を防ぐ方法がありますね。
それによればパンやご飯などの糖質は最後ですが、船内ではパンが最初から出ているのが普通。順番も大事ですが「ゆっくりよく噛む」ことも重要です。唾液がよく出て消化を助けますし、食べるのに時間がかかるので、食べ過ぎ防止にもなります。
メニューを自分でアレンジ
野菜をメインにして、タンパク質(肉、魚、卵、乳製品)と糖質(パンや麺類、ご飯)を添えていくという食べ方にすればカロリー過剰にはなりません。メニュー通りではなく、前述カルパッチョのように毎食「マイチョイス」にするのも楽しいですよ。
一例を挙げてみます。食欲がない時は前菜2皿と主菜に。小海老のカクテル+アスパラガスとハム。主菜は「ステーキ皿のお肉抜き」を注文。ステーキに添えられているブロッコリーや人参など野菜だけ頼むのです。これなら計3コースになって同席者にも迷惑とならず、最後まで一緒に食べられます。
ズボンはファスナー付き
クルーズ中やっぱり気になるのは体重です。ジムに体重計もありますが揺れるのであてになりません。お奨めは可能な限りファスナー付き、ベルト付きのズボンやスカートを持参すること。「キツくなった」と気がつき体重計の代わりになります。ゴム入りのパンツはパジャマだけにしましょう。新型コロナの重症化を防ぐためにも適正体重を保つのは重要です。
世界一周クルーズは「マラソン」
写真は軽い運動のチェア・エアロビクス教室です。
体に良くて友達もでき一挙両得。ウォーキングなど、運動のルーチンが誰にもあるでしょう。「マラソン」のような長いクルーズでは、体と同様に心も健やかに保つ工夫が要ります。
ひとり、二人、みんなとの時間
船内ゴシップや噂話など、クルーズ中にさまざまな情報が耳に入ってくるものです。心の換気をする意味で毎日3つの時間をバランスよくもちましょう。
- ひとりの時間(日記をつけたり読書など)
- 二人の時間(夫婦や同室者と過ごす)
- 多くの人とシェアする時間(イベント参加など)
一人旅の方でも誰かと語り合う時間が大切です。レストランの同席者やイベントで出会った人と友達になりたいもの。また仲良しグループといつも一緒にいると疲れます。時には一人でウオーキングを。
ハレとケの日をつくる
世界一周は「暮らすようなクルーズ」でしょうか。
パーティがあるなら「ハレ」の日ですからオシャレして深夜まで遊ぶのも良いでしょう。終日ツアーでヘトヘトに疲れた翌日は「ケ」(平常)というより、ゆっくり休みたい日曜日になるはず。
客室の清掃をパスしたり、食事はルームサービス、イベントも全休、デッキで何もしない日にしても。体と心に相談しながら、毎日を続けていく。これが長期クルーズの極意と言えそうです。