2020年1月、東南アジアのクルーズを終えてシンガポールの空港に到着した時でした。真冬でも温暖なエリアなので通常ゆったりした雰囲気なのにこの時は違っていたのです。アジア系の乗客はほぼ全員がマスクを着用。空港職員に聞いたら「悪質なインフルエンザが流行り出したらしい」とのこと。これが新型コロナの始まりでした。
英国に住む私は2020年から2022年の末まで、合計7隻の客船に乗る機会に恵まれました。陸路で英国から乗船したり、航空機を利用しフライ&クルーズも。世界中でコロナ規制がどんどん緩和されてきて嬉しい限りです。2023年春には外国船による日本発着クルーズも再開が決まりましたね。しかし、当分は要注意の状況が続くでしょう。再開クルーズに役立つ情報を合計6回でお届けしたいと思います。第三回目のテーマは「寄港地」です。
寄港地の過ごし方は3種類
2021年は多くのクルーズが再開されましたが乗船前検査やワクチン証明、船内のコロナ規制などはまだ厳しく行われていました。マスク着用や対人距離を取ること、手指の消毒は必須だったのです。航程についても感染予防の観点から船社は苦肉の策を講じていました。たとえば以下の通りです。
・ 無寄港すなわち「周遊」というクルーズ
・ 寄港地で上陸できるのはツアー参加者のみ
(自由行動は感染経路が特定できないなどの理由で不可とされていました)
やがてワクチンが普及し各国の感染率や重症化率が低下して、上記ルールも緩和されてきましたね。よって2022年末には寄港地で自由に散策する事も多くの船社で可能になってきたのです。コロナ前と同様に、寄港地では3つの選択が戻ってきました。
- オプショナルツアーに参加する
- 個人で上陸し自由散策する
- 上陸せず船内で過ごす
クルーズが一週間という長さなら1~2回ツアーに参加し、あとは自由に街歩きをしたり、のんびり船内で過ごす一日をもうけることも考えられます。
次に、ツアーの実施状況を年次別に見てみましょう。
2021年のオプショナルツアー
乗客がツアーを申し込む理由は幾つかあります。
- 自力ではコストも時間もかかる場合
- バス移動なら体がラクだから
- 世界遺産などガイドの説明が聞きたい時
写真はクイーンエリザベスがビートルズで有名な英国のリバプール港に入港時、ツアー出発前に撮影したものです。乗客は船内からここまでどうやって移動したのでしょうか。時系列にご説明しましょう。
- 前集合なし(感染防止)→直接下船口へ
- 下船口まで船内各所にクルーが待機して案内(ツアー参加者のみが上陸するのを確認していた)
- クルーズカードを提示し、下船
- ギャングウエイ→バス乗り場までスタッフ待機(バスに乗らず、自由行動に行かないよう確認)
港内も通路が設定されていて乗客の移動は「監視」されているように感じました。船社の規制だけではなく地元の港湾当局などにも厳しいルールがあったからでしょう。
もともと乗客数を抑えていたためツアー申込者も少なめで、船内のラウンジなど前集合の場所で配布していた「バスの号車シール」は不要でした。岸壁で乗車前に参加者リストを確認。2021年の夏は各バスに定員の約半数を目安に乗客が乗りました。50人乗りならば約20人程度です。
イタリアではバスを降りて観光する時は、高性能のFFP2マスクを着用する規則が続いていました。持参していない乗客にはツアー前に地元の旅行会社が配布していたことも。いわゆる鳥のくちばし風に見えるマスクで東京オリンピックで一般的になったものです。船内ではマスクの種類を指定することはほぼなかったはずですが寄港地が求めるルールには乗客も従わなければなりません。
バスの車内には「密」を避けるため、席を空けるように指示する案内板が座席に置かれていました。通路を挟んで片側だけに座るバスもあり、座席の後ろには消毒用のハンドジェルをぶら下げて手の消毒が奨励されていたのです。
2022年ほぼ正常に復帰
2022年になるとワクチン接種を数回済ませた乗客が増えて感染率も世界的に下降してきました。よって船社もぞくぞくと乗船前検査を廃止するなど規制緩和を進め、寄港地でもツアーに参加せずとも自由に上陸できるようになってきたのです。
写真の徒歩観光は、前集合なしで船内から各自が直接バス乗り場へ行きました。ガイドさんもマスクなし、車内でも降車後もマスク着用義務なしです。
なぜならベルギーはコロナ規制を全面的に解除していたからでした。ただし私を含めマスクを着用していた人も多少はいましたね。イヤホンガイドという船内で貸出する機器も無事に復帰しています。
規制は緩和されましたが、寄港地観光はみなさんそれぞれのご判断となるでしょう。個人的なお奨めはすべての寄港地でツアーを申し込まず、できればツアー参加と自由行動、上陸せず船内で楽しむ日をうまく組み合わせることです。体の声をききながらクルーズ中の体調管理ができることでしょう。