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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記
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クルーズのマナーを考える

2023.10.11
クルーズエッセイ

客船で多くの人と出会えるのは楽しみのひとつだと思います。小型船であれ大型船であれ、年齢も国籍も異なる乗客が多いクルーズ。予期しないことが船内で起こることもあるでしょう。先日こんな話を聞きました。友人の夫婦が初めてクルーズに参加したのです。

奥様の念願がかなって乗船したのですが、ご主人は不愉快な経験をされ「もう二度と客船には乗らない」とへそを曲げられたとか。その原因はレストランのテーブルメートでした。具体的にどうだったのかは、分かりません。良識のある立派な紳士であるご主人を怒らせたのはどうやら不適切なマナーだったよう。

自分も他人も楽しめるクルーズのために、今回はクルーズでのマナーを確認してみませんか。

「音」にご注意を

客船のキャビン 撮影:吉田あやこ

私が乗船勤務をしていた時、しばしば聞いたのが騒音の問題でした。いくつか例を挙げてみます。

  • 隣室のテレビや話す声が大きすぎる
  • 隣人が引き出しを開ける音がうるさい
  • 近くで客室ドアをバタン、と閉める音が気になる
  • 隣室から毎夜イビキが聞こえて眠れない

 

客室の壁は最近ますます薄くなってきたようです。よって隣室の「生活音」が気になる方々が出てきても不思議ではありません。気をつけたいものです。殆どの場合、苦情が出ている事をお話しすれば改善してもらえるのですが、厄介なのはイビキの場合。こんな時のために耳栓やアイマスクは必携ですね。

もし隣室に苦情がある場合は、直接コンタクトを取らないで必ずレセプションに連絡を。本船側では「ご近所の方がお困りのようで…」などとソフトに伝えてくれるはずです。

そして便利な携帯電話も、場合によっては船内で嫌われ者になってしまいます。マナーモードや声の大きさなどクルーズでも再考したいですね。

食事でのマナー

クイーンメリー2メインレストラン 撮影:吉田あやこ

「テーブルマナー」は馴染みがある言葉でしょう。「ナイフは外側から」「音をたてずにスープを飲む」などは結婚式の披露宴では役立つはず。しかし船上のレストランではテーブル作法よりも食事に関する総合的なマナーや礼儀を知る必要があります。

  • 時間に遅れないように(6人席など相席の場合)
  • 食事中に席をたたない(トイレを済ませておく)
  • 自慢話や個人的な詮索は、ほどほどに
  • 食事が来たら喋るより食べることを優先させる

 

ひとつずつ解説していきましょう。ご夫婦だけの二人席なら問題ありませんが、大きいテーブルでは全員が揃わないとウエイターも注文を取りません。ディナー後にあるショータイムを楽しみにしている方もいますから、開始時間を守る事は大切です。

洋食に限りませんが食事中できるだけ離席しないのが理想といわれています。必要ならコース料理の合間すなわちお皿が下げられて次の料理が届く前がベスト・タイミングです。

どんな豪華客船に何回クルーズしたか。なるほど、経験談はとても参考になりますが、毎晩こんな話を聞きたい人はいないでしょう。そして「どこの大学出身ですか」などという質問も場合によっては失礼にあたることもあるはずです。

そしてレストランよりも自由度が高いブッフェはどんなマナーが必要でしょうか。まだコロナの影響で、クルーが取り分けてくれる客船もあるようです。

  • 係の指示に従う
  • 必要なだけ頂く(フードロスを減らす)
  • 自分で取れる場合は、注意して(手を触れない)

 

ブッフェは食品がすべて見えますから便利ですね。パンなどはトングを使うのがマナーですが、たまに手で取る方も。自分で食べるなら問題ありませんが、手に取って選んだり戻したりするのは如何なものでしょう?残念ながら、よく見かける光景です。

人に恥をかかせない心配りも

船内のアトリウム 撮影:吉田あやこ

広いラウンジやレストランで他の乗客と会ったり話したりするのは楽しいものです。またイベントや寄港地ツアーで友人も増えていくもの。しかし他人が気になって「コメント」される方も出てきます。噂話やゴシップは聞くと面白いかもしれませんが、ご本人にとっては不愉快なはず。

「年齢にしては派手なキモノね」

「ご主人かしら。それともお父様?」

「もっとお洒落な子供服があるのに」

他の乗客がいる公室で、こんな話は聞きたくないものです。心の中で思ったり、ご夫婦など同室者とひっそり話す程度にとどめたいもの。現代は多様性の時代。何歳になっても「はじけた感じ」を楽しむ人々や年の差カップル、同性のパートナーと船内で出会うこともあるでしょう。また人のファッションよりも自分が着るモノに夢中になれば、クルーズをもっと豊かにできると思います。

最後に、私の小さなルールをご紹介しましょう。それは、男性の「社会の窓」が空いているのを発見した時。必ず近くにいる男性に頼んでお知らせすることにしています。女性から言われたら、メンツがつぶれるでしょうから。人々と気持ちよくクルーズできるように、引き続きマナーや礼儀を磨いていきましょう。

執筆者 | 吉田あやこ
クイーン・エリザベス2と初代飛鳥元クルー、現職はクルーズアンバサダー。
クルーズバケーション社のコーディネーターを経て現職。英国在住30年。
クルーズガイド取材アシスタントなどを含め、世界の客船約100隻に35年の乗船経験あり。
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