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TRAVEL NOTES
クルーズ旅行記
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久しぶりのリバークルーズ、やっぱり「川」もいい!

2023.12.20
クルーズエッセイ

私が客船に乗り始めたのは25年ほど前。その3年後くらいに初めてのリバークルーズに誘われました。それ以降、欧州の色々な川には2年に1度ほど、さらにアマゾン川、メコン川などちょっとアドベンチャーなリバークルーズにも参加するようになりました。今年の夏休みは2020年に行こうと申し込んだリバークルーズがやっと実現しました。その川とは、、、

3年越しのリバークルーズ

最初に行った欧州のリバークルーズはドナウ川の「クリスマス・クルーズ」だった気がします。もともと欧州のクリスマス前の雰囲気が大好きで、12月になると色んな国のクリスマスの準備やマーケットに行くのが20代からの年中行事でした。

今も人気のクリスマス・クルーズでは、ドイツはもちろんオーストリアなどのクリスマスマーケットを効率よくめぐれます。
 
それだけでなく、海のクルーズとはまた違うエリアの観光もできるので、リバークルーズは、私の中でクルーズを選ぶ時の一つの選択肢となっていきました。

クリスマス同様に、チューリップの季節にオランダを中心にめぐるライン川クルーズなど季節のものもありますし、世界遺産を多く見られるローヌ川、約10カ国を通るドナウ川など、見られるものや体験できるものが違うので、「これで終わり」ということがありません。

ひと通り、メジャーなリバークルーズを体験して、気になっていたのはポルトガルの「ドウロ川クルーズ」でした。ポルトガル北部の街・ポルトを出航して1週間のクルーズです。ポルトの街自体が世界遺産ですので、リスボンの大学に通っている姪がバスで3時間かけて来てくれて、ポルトをすごい勢いで案内してくれました。川を挟んで両岸はかなりの坂なので、クルーズ前に歩き疲れないように、Uberをかなり駆使してくれました。

ポルトというと、ポルト・ワインのイメージがあり、下戸の私が楽しめるか不安でしたが、ドウロ川全域のワインの歴史を知るだけでも十分興味深いことがわかりました。

川が狭く蛇行しているドウロ川は風景もどんどん変わっていく 撮影:藤原暢子

リバー客船の最初の緊張感

大好きなリバークルーズですが、海の客船と違って、川には水位を変える閘門(ロック)や橋があるため、船はとても小さめです。基本は3階建て、乗客定員は100〜200人ほどです。

とくにドウロ川は川も狭く、船は小さめ。今回はシーニック・クルーズの「シーニック・アジュール」という船です。オーストラリアの船会社ですが、乗ったことがないのでとても気になっていました。

海の客船も2隻擁していて、たまたま今年の6月にシーニック・クルーズの海船「シーニック・エクリプス」が東京港に寄港して、見学させていただき、素敵なラグジュアリー客船だったので、期待値はあがります。

シーニック・クルーズの海船「シーニック・エクリプス」(東京港)。こちらも潜水艦や遊覧ヘリコプターを擁するラグジュアリー客船 撮影:藤原暢子

ただ、先に記述した通り、乗客定員がすくないリバー客船はなかなかの社交力が必要とされます。乗船後、ラウンジに全員が集められ(ちなみに同船は定員96名)、今回はホテルマネージャーが乗客たちの国と人数を紹介しました。

英国、米国、豪州、カナダからほぼ同じくらいの20数名ずつ。そして日本からは私と夫の2名でした。「今回は日本からも参加してくれていて、日本とポルトガルは16世紀からの長い歴史的関係があります」と言ってくれたので、他の参加者が振り向いて、歓迎の拍手をくれました。

船内のラウンジ。手前にバーと軽食やスナックが食べられるエリアが 撮影:藤原暢子

川も5つ星船のシーニック

その後、船の主なスタッフが紹介されました。キャプテンはもちろん、3人のツアーガイド、1名のエンターテインメント担当、そして3人の「バトラー」が並びました。

リバークルーズでバトラーが居たのは私の体験では、パンデミックでリバークルーズを辞めてしまったクリスタル・クルーズ以来です。その時はそんなにお世話になった覚えはないのですが、今回は色んなことがバトラー経由で進むので大変ありがたい存在となりました。

リバークルーズはメインダイニングが一つのことが多く、6人掛けのテーブルなども多いので、相席で話をするのも醍醐味。ただ、初日はまだ日暮れ前で、のんびりポルトの夕景を見ながら夕食を食べたかったので、「屋外デッキで食事してもいいですか」と聞くと、「もちろん、いいですよ」とのこと。

メイン・ダイニングが開いている時間はメイン・ダイニングの食事かルームサービス用の食事が選べるらしく、さっそくここでバトラーさんが登場です。メイン・ダイニングの前菜、メイン、デザートと、時間を見計らいながら、屋外デッキに運んできてくれました。その後もツアー後にのんびりしたい時やちょっと夫が疲れた時もバトラーが客室に料理を運んできてくれました。

客室で何か不都合や希望があると、すぐバトラーが飛んできてくれます。いつも飛び回っているバトラーにいろんな頼み事をしてしまったので、「ごめんさいね」と言うと、「これは私たちの仕事なのですから、謝らないでください」と言われ、それ以降、何か頼んだ時は「ありがとう」と言うようにしました。

小さい船に44名のクルーが乗っているのもすごいですが、バトラーだけでなく、どの職種の人とも連携が取れていて、船内生活がとてもスムーズでした。ランドリーもランドリーバッグ1つ目は無料。まだ汗をかく時期だったので、下船2日前くらいに「ランドリーの締切は今日までですよ」など、こちらのクルーズスタイルを把握して、先回りで提案したり、対応したりしてくれるサービスは秀逸でした。

お世話になったバトラー3名。働き者で気遣いが素晴らしかった 撮影:藤原暢子

歴史を知ればドウロ川の魅力がますます分かる!

ツアーも毎日2種類くらいがあり、どれもクルーズ代金に含まれています。事前に申し込んでいましたが、再度確認してくれて、並走して走るバスの空きがあれば変更したり、申し込むことができます。

基本は前日の夕方前にラウンジでツアーの説明があり、気温や持ち物など丁寧に教えてくれます(健脚度も気にしてくれます)。ツアーガイド3人が船内での説明や相談、実際のツアー案内をしてくれますが、ドウロ川近辺で生まれ育ったクルーが多いので、歴史や生活情報もよく知っています(夜停泊の時に仕事がなければ自宅にちょっと帰る人も)。ゆえにバスの中での説明も機械的ではなく、深い話や、愉快な話が多く、思わず真剣に聞いたり、大笑いをしてしまいました。

出航翌日はレグアというところにある「Museu do Douro」(ドウロ博物館)に行きました。ここでは博物館の方が、ドウロ川やドウロ渓谷、ブドウやワイン製造、できたワインをポルトまで運んだ方法を、当時の道具やわかりやすい表示方法で丁寧に説明してくれました。

今ではポルトもドウロ川も多くのリバー客船が就航していますが、当時はドウロ川上流で作ったワイン樽を、川を下ってポルトに運ぶのは命がけだったそうです。なんとかポルトに着いて、ワインを他の国に輸出しようとするとワインが劣化するので、アルコール度数の高いブランデーなどを加えて発酵を止める方法が始まったそうです。すると、本来の原料であるブドウに含まれる糖分が分解されないため、甘いポルトワインになるということを初めて知りました。

というわけで、今や輸送も鉄道を使い、早く簡単になったドウロ川付近で作られるワインは甘くない普通のワイン(赤、白、ロゼ)もあるそうで、飲めないながらも勉強になりました。それだけでなく、険しい渓谷を切り開いて作ったブドウ畑やそこでブドウやワインを作ってきた人々の苦労や工夫も理解することができました。

「ドウロ博物館」で映像や昔使われていた道具などを見ながら川やワインの歴史が学べる 撮影:藤原暢子

急勾配な土地にどうやってブドウの木を植えるか、どうやって畑を支えるかなどもその博物館で詳しく教えてもらったので、その後両岸の山に広がるブドウ畑を見るたびに、人々の苦労や知恵が頭をよぎります。機械が入らないような急斜面に植えられたブドウ畑や少しなだらかな土地などを、ゆっくりと航行する船から見るとなんとまあ、美しいこと!
ディナーが始まって、屋外デッキから人がいなくなってきても、ずっと眺めていたくなる景色がありました。

ドウロ川クルーズは春から秋まで。ちょうどブドウの収穫期で両岸の風景は圧巻 撮影:藤原暢子

国境を超えて、スペインに入り、バスで華麗な装飾が施された砂岩造りの建築の街サラマンカへのツアーもありましたが、やはり興味深かったのはドウロ川から少し行った小さな村を訪ねて、地元の人の家や生活を見せてもらうツアーです。約20人ずつに分かれてまわるので、個人宅を訪ねる感じでワインやできたてのアーモンドのおやつなどをいただいたり……。

少人数に分かれて小さな村の昔の家を見せてもらう。庭では奥さんが炒ったアーモンドやワインを振る舞ってくれた 撮影:藤原暢子

別の街では何代も続いたワイナリーを復活させようとしている場所を訪ね、ワインを味見させてもらいました。その通りかかりにあった消防署にちょうど出社した人がいて、わざわざ消防署の扉を開けてくれ、古い消防車を見せてくれたり、農家の人がブドウ畑のブドウを房のままおすそ分けしてくださったりと、のんびりとした歓迎ムードが温かく、ほっこりしました。女性が一人で焼いているパン屋(朝10時には閉まる)に立ち寄ったりできるのはガイドさんたちとの信頼関係あってのツアーだなと思いました。

小さな村の唯一のパン屋。他にも咲いた花を摘んだご夫人が村の仲間に分けている姿など、ほっこりなシーンがあちこちに 撮影:藤原暢子

ポルト以外の寄港地は小さく素朴な村。夏は暑く、冬は寒く、ブドウの栽培からワイン作りまで過酷な仕事なので、過疎化が進んでいるそうです。あまり観光化はされてほしくないですが、「頑張って!」と応援したくなりました。

このような地域の本質を見られるのはやはりリバークルーズという少人数の乗客で、地元の人と乗客を繋いでくれるポルトガル人ガイドがいてくれることが大きいと実感しました。

両岸を眺めながらもっとポルトガルを知る旅

ツアーは基本、午前に3〜4時間。午後船に戻ると、あとは船が航行するので、皆それぞれに好きな場所で流れゆく景色を眺めるのがリバークルーズでは多いと思います。数カ所ある閘門(ロック)通過はリバークルーズのハイライト!

リバークルーズのハイライトはロック!ドロウ川は狭いので船はギリギリで毎回スリリング 撮影:藤原暢子

海のクルーズではツアーで観光地を訪ねたり、お昼に一旦戻っても港町を散策したり。船に戻ってきてからは充実した船内施設で遊んだりすることが多いと思います(私もです)。

久しぶりにリバークルーズでゆっくりと船上から景色を眺めながら過ごす時間の豊かさに、「ああ、やっぱりリバークルーズはいいな」としみじみ思いました。

屋外デッキで両岸を眺めながら、色んな方と話をするのもいいですし、眺望のいいラウンジでは、「アズレージョ(ポルトガルのタイル)の絵付け教室」「ポルトガル語教室」「エッグタルト料理教室」など参加型の教室もありました。

エッグタルトの実演教室。男性乗客も多く参加。難しい部分は実際に乗客にやらせてくれる 撮影:藤原暢子

ツアーガイドの方が熱心で、昔のドウロ川やポルトの映像を見せてくれたり、コルクの産地としては世界一と言っていいので、「コルク」についてのプレゼンテーションも興味深かったです。

ポルトガルはコルクの三大産出国。ワイン用だけでなく色々な使い道を模索中という 撮影:藤原暢子

シーニックのリバー船の特別なイベント

シーニックの船は1クルーズで4回、ラウンジの先の「ポルトベッロ」というところで、特別なポルトガル料理の夕食を供してくれます。全員が1回ずつ、好きな日程を予約して、シェフの説明を聞きながら、ポルトガルの人が特別な日に食べるという食事やデザートをいただけます。これも人気でほとんどの方が体験しました。

船首の「ポルトベッロ」でポルトガルの特別ディナー(要予約)。シェフの説明も興味深い撮影:藤原暢子

メイン・ダイニングは前菜、メイン、デザートとどちらかというと、インターナショナルな料理なので、よい経験になります。

晴れた日中には、「ポルトガルのBBQランチ」を屋外デッキでしてくれた日もありました。焼いた魚(イワシが多い)も食べるので、日本人にも喜ばれそうです。

天気のよいお昼は屋外デッキで「ポルトガル・バーベキュー」。魚もお肉もあって日本人にはうれしい! 撮影:藤原暢子

スロートラベルが人気なのか、クルーズの予約後はスマートフォンのアプリを使うためか、今までのリバークルーズより若干年齢が若くなった気がします。

5つ星客船を謳うシーニック・クルーズですが、ある夜には「ダンス・アンダー・ザ・スター」という日があって、夕食後屋外デッキでディスコタイムがあったのにはびっくり! 乗客もノリノリです。リバー客船は桟橋少ないので他の会社の船も真横に並んでいましたが、音楽を聞いて横の船の乗客やオフィサーも自分たちの屋外デッキで一緒にずっと踊っていて、私たちは船の柵ごしにハイタッチしたりして賑やかな夜となりました。

屋外デッキでディスコタイム(大盛りあがり)! これはリバークルーズで初めて体験。隣に係留している船の乗客も一緒に踊りだす 撮影:藤原暢子

通常の夜のエンターテイメントは地元の方が乗り込んできて、ファドの演奏やスペインの時はフラメンコのダンスだったり、グループを作って競争するゲームだったりして、どれもほどよく心地よく楽しい時間でした。クルーのショーも派手ではありませんが、心に残るもので、乗客も一体感に包まれました。

夜のエンターテインメントは地元の人の音楽演奏やダンス。真ん中の人が12弦あるポルトガルのギターを演奏 撮影:藤原暢子

シーニックのクルーズでは「エンリッチメント・プログラム」というものも1晩あり、今回はポルトの「セント・フランシス教会」で四重奏と男女2人によるオペラでした。100人もいない乗客のための、特別コンサートでした。

乗客だけのスペシャルイベントはポルトに戻った夜に大聖堂で四重奏とオペラだった 撮影:藤原暢子

目も心も舌も耳も、そして初めてのことを色々としることができたシーニック・クルーズのドウロ川クルーズ。申し込んでから3年越しの旅でしたが、心にたくさんの栄養と活力をもらったクルーズでした。

「シーニック・アジュール」の船体。小さいながらもジムやマッサージ室、屋外には浅めのプールも! 撮影:藤原暢子
執筆者 | 藤原暢子
長崎生まれで、父は元船医、姪は客船元乗組員という海のDNAを持つ一家。1998年に英国の客船で横浜から英国まで世界半周をし、改めて船旅の魅力に開眼。フリーの編集者からクルーズ取材、撮影、執筆の仕事を徐々に増やす。2004〜2010年、2017〜2019年と約10年間、(株)海事プレス社の客船情報誌『CRUISE』の編集長を務めつつ、さまざまな媒体で国内外のクルーズを紹介(現在は同誌プロデューサー、クルーズ・ジャーナリスト)。25年間で約120隻の客船で80カ国をめぐる。仕事以外の休暇もついクルーズへ。宝物は今まで船上や寄港地で出会った人々。
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