2024年は第二の「クルーズ元年」と言われているようです。名前の由来は平成元年(1989年)が関係しているでしょう。この年に欧米型クルーズをめざした昭和海運の「おせあにっくぐれいす」や、商船三井客船の「ふじ丸」が就航しているからです。
そして35年後の今年は郵船クルーズ「飛鳥Ⅲ」の建造が本格的に始まり年末には商船三井クルーズの「ミツイ・オーシャン・フジ」が就航する予定。またMSCベリッシマやクイーンエリザベスなどの外国船による日本発着クルーズも評判のようです。
さらに11月末から新しい船社が日本人専用の客船でクルーズを提供するとのこと。どんな客船なのか、2回に分けてご紹介したいと思います。
北欧のエスプリが感じられる客船
バイキング・クルーズの本社はスイスにありますが、創業者はかつてバイキングの国として知られたノルウェー出身です。当社は3部門に分かれていてオーシャン(12隻)、リバー(81隻)、そして探検船(3隻)として現在運航されています。
その中で、オーシャンクルーズ(外洋船)の一隻であるバイキング・エデン(約4万8千トン乗客930人)が、今年から日本人向けに神戸発着クルーズを開始することになりました。日本語サービスや和食にも対応するそうですから、安心できますね。
全て料金に含まれるオールインクルーシブ制度を当社は採用しています。具体的に見てみましょう。
- 船内チップ
- WiFi
- 全ての食事
- ランチ&ディナー時のワインやビール
- ソフトドリンク
- スパやフィットネス施設の利用
- 24時間のルームサービス
- セルフランドリー
「お客様が必要とするものは料金に含めたい」というコンセプトがあるとか。2015年に就航した第一船バイキング・スターを含め、私は合計3隻に乗船しました。ちょっと船内を歩けばインテリアや船内の施設で北欧らしい雰囲気を感じるはずです。
イタリア船、英国船、フランス船など世界各国の船がありますが当社のような北欧船は他にありません。フォーマルもなく、手頃な料金で高級感が味わえるのも特徴といえるでしょう。
船内に行き渡る居心地の良さ
北欧といったら、何を思い浮かべますか。長い冬を快適に過ごすために工夫された家具やインテリアは有名ですよね。当社の客船は、まさに「北欧の家」。
淡いブルーとグレーが基調色で客室にある水ボトルも、色が統一されています。飲料水は毎日船内で作られこのボトルで届きます。好みでガス入りも選べました。
またバスルームには廃熱を利用した床暖房が全室に入っています。夏でさえ、床が温かいとホッとするものです。特に夜間に起きて利用するシニア世代には評判のようでした。飛鳥Ⅱより少し小さい5万トン以下の中型船ですから、小さい港にも入れ、上陸や帰船も混み合わず行列はほとんどできません。
珍しいと思ったのは、レセプションでした。いわゆるカウンターではなく欧米の高級ホテルと同じように、たくさんある個別のテーブルで係が対応するのです。ラグジュアリーな客船といわれる所以はこんな点にあるでしょう。
セルフランドリーも船内に数か所あり設備が充実していました。洗濯機、乾燥機、アイロン台のほかTVも完備。私の乗船時は特にオープン時間の記載はなく、いつでも利用できた記憶があります。
そして重要なのはクルーたちがみな経験豊富だという事です。それは第一船から顕著でした。命名式直後のディナーでも遅れることなくサービスは問題なし。何人かに聞いてみたら予想通り全員がかつて他の小型高級船で働いていた、という答えでした。
コロナ後の2022年、バイキング・マーズ命名式で乗船した時、再会したクルーたちは更に輝く笑顔で迎えてくれたのです。
旅慣れた大人向きの客船
いったい乗客はどんな方々でしょうか。プールは一年中いつでも入れ、気温が高ければルーフを開け寒ければガラス天井の明るいデッキでお昼寝や読書。健康志向な中高年が多く、当社のリバークルーズを経験したリピーターらしき方を何度も見かけました。欧州よりも北米から乗船するファンが多いそうです。
北欧らしい雰囲気は船首の展望ラウンジでもよく感じられるでしょう。あたかも北欧のホテルに滞在しているような気分になります。木の椅子や手編みニットのクッション、トナカイの毛皮等が何気なく置かれていますので。背面の大きな本棚には見てるだけで楽しい自然や動物の写真集や書籍がずらり。ゆったりしたソファに陣取り、大きな窓を通して外を眺めながら、茶葉で淹れてもらった緑茶を楽しみました。
家族連れにも会いましたが走り回る子供は少なく船内は静かで落ち着いていたのが印象的です。また賑やかなカジノもありません。大人が楽しめる客船であり、車椅子用の客室も7室完備されています。