最初からご質問で失礼致します。皆さんはかつて「グレードアップ」されたご経験がおありですか。客船のキャビンやレストランのグレード、航空機の座席がワンランク上のクラスに…などというもの。
突然こんな機会に恵まれたら、誰でも喜んでしまうでしょう。しかし残念ながらその確率は低いもの。「グレードアップ」は夢の話でしょうか?いえいえ、皆さんの気持ちしだいで別な方法もあるのですよ。
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船旅は「自分」磨きに最適
キャプション:MSCクルーズの上級客室 撮影:吉田あやこ
大きな客船には多くの異なる客室があるものです。窓がない内側のインテリア客室から大きな窓付きの外側客室そして屋外に出られるバルコニー付き客室など、予算によっていろいろチョイス出来ますね。航空機のファーストクラス乗客などと違い、客船の場合は客室を一歩出てしまえば、通常あなたの客室カテゴリーを知る人はあまりいません。
たとえ内側の客室を選んでも、気持ちの上で上級な乗客になってクルーズを楽しむことも可能です。グレードアップを人任せにするのではなく、自らを船上でワンランク上げてみるのは如何でしょうか。英語やマナー、おしゃれ、笑顔など、今後の人生に役立つものをクルーズ中に追加し身につけるのです。心身がさらに充実すれば客室のグレードアップよりずっと得るものが多いはず。
船旅文化という言葉があります。世界じゅうから集まった乗客たちと洋上の社交場で過ごす楽しみ。たとえタキシードやロングドレスを着ていなくても身のこなしやしぐさをカッコ良く見せる所作は学べます。老若男女すべての人にとって、客船は楽しむだけではなく、学んで輝く場でもあるのです。
衣・食・住でみるクルーズ
さて、具体的にどんなことを磨いていけばよいでしょうか。ざっくり「衣食住」で分けてみました。
衣:服装、アクセサリー、靴、バッグ
食:テーブルマナー、メニューの知識、英語
住:寄港地ツアー、船内行事、エクササイズ
衣:シンプルに、同行者と色コーデも
まず最も気になるのは着るモノです。ブランド品や高級品はクルーズの必需品ではありません。すでに持っている品をよく手入れして持参し、同行の家族や友人と相談して色あいを調和させると、シックに見えるでしょう。例えば、黒&紺より黒&グレーとというように。
欧州人はジュエリーなどを祖母から受け継いだりして、古いデザインでも大切に使う傾向があります。ダイヤモンドより地味なパールや琥珀も人気。その人に似あっていると思ったら、よく観察しましょう。男性は粋なポケットチーフの使い方も見て下さいね。
人々はTPOによってどんな靴やバッグを使っているでしょうか。ラウンジなどで何気なく往来を眺めるのも洋上でゆったり過ごすコツではありませんか。
食:レストランはひとつの「社交場」
英語で「食べる」はEat(イート)です。しかし客船では「食事する」Dine(ダイン)という言葉をしばしばディナーなどで使いますね。単に料理を食べるだけではありません。テーブルを囲んで会食をする、という意味がありますので。
日本人にとっては苦手なテーブルマナーですが客船では毎夜「無料」でブラッシュアップが可能。全員が居心地よく時間が過ごせるよう、同席の人々はどんな工夫をしているか。また逆にどんな反則?をして嫌われているか。マナーの本には書いてないことが船上で分かります。
フルコースでは全く知らない料理が出てくることがあるものです。中近東のメニューや仏語交じりの英語だったり。悩んだら同席者やウエイターに聞きましょう。これはしぜんに英語力をつけるチャンス。日本船でも、気さくに隣の人に軽く声をかけてみるのもお薦めです。「これは胡麻ダレでしょうかね?」心を開いて人に話しかけることでその場が和やかになると思います。
住:ソロクルーズでも一人ではない
多くの乗客と接点がもてるクルーズ。おひとり様で乗船されても、寄港地で観光ツアーに参加すると友達ができるものです。また船内ではおひとり参加の方用にティータイムや上陸観光のお誘いなど工夫がされています。さらに文化や歴史講座など専門家によるレクチャーも開催されているので新しい友人や家族と共に、知識の充電時間も設けましょう。
強調したいのはヨガやピラティス、ズンバというダンスなど、何か新しい運動に挑戦することです。自宅そばでは受けにくいクラスを安価で体験できるクルーズの恩恵を享受しましょう。
笑顔と穏やかさ
世界じゅうで平和や安定した暮らしをを望む声が強まってきました。こんなご時世だからこそ、人々が互いに助け合って人生をシェアしていきたいもの。デジタル世代だからこそ私達は直接的な「ふれあい」を求めているのではないでしょうか。クルーズ中に笑顔でたくさん挨拶してみませんか。
たとえ相手から返されなくても良いのです。微笑むだけで自分の心が穏やかになりますから。パーティなども積極的に参加して、素敵な笑顔や輝いている人から多くを「盗みましょう」!こんな体験は荷物にならず大切なお土産になり自分をグレードアップさせてくれるのです。